春分の日


神の島、久高島。

琉球王府にセーファーウタキから拝まれていたこの島は
神人(かみんちゅ)とよばれる女性と、海人(うみんちゅ)の男性が
年間30ちかく太古からの儀式を受け継ぎ自然を守りながら生活しています。


貝殻ひとつ、石ひとつ動かしてはならぬ、
ありのままの自然が、命が、宿る島。

岡本太郎氏が「なにもないことへのめまい」と表現されていましたが
この島にはなにもない。生命力に満ち溢れた命の輝きだけがあるのです。

初めて訪れたとき、ありのままの美しさにただただ涙が溢れました。
そして、ありのままの自分の存在を、命そのものを愛しく感じました。


1978年12年に一度行われるイザイホーがこの島から消え
女性の聖地イザイホーに入ることを唯一許された
男性写真家比嘉康雄さんの命の灯が消え
比嘉康雄さんの想いを受け継ぐように2002年久高島に移住し、
島の生活の記録を撮っておられるのが
大重潤一郎監督。

最初の3年は泡盛を交わしながら
とにかく島の人ひとりひとりと コミュニケーションをとって
カメラには一切触れなかったんだそう。

すべては心の通い合いのなかから。


海に入るとひとりひとりが主役となって生きている。
島に存在する植物・人もすべて同じ。 それぞれがあるがままに。
命あるものとして。


12年かけて3部作計画。
気の遠くなるような・・・と思ってしまうけど、
監督はなんのその。
出来ることなら120年くらいかけてじっくり撮りたいんだそう。

今回お会いしたご縁で、
「久高オデッセイ」「久高オデッセイ 生章」
2本の上映会を行うことになりました。
1部撮影中に脳出血で右半身が思うように動かなくなっても
監督の心は久高島の美しい自然を前に突き動かされ撮り続けられた。
真っ赤な夜明けをみたとき、自分も島も蘇るときだと。
「命ある限り本物の命を生きたい。」


3部に今まさに取り掛かっていらっしゃるという。


大重監督はコロラド州のビッグマウンテンのふもとで祈り続けている
インディアンのおばあさんたちをエールするために、
岐阜からコロラドまで歩いた若者たちの姿を追ったドキュメンタリー映画
「ビッグマウンテンへの道」も撮影されています。

「命は半分死んでるんだよ。 でも心は4倍くらい毛が生えて強くなった。」
監督の命の響きを感じて頂きたい。


去年はインカ帝国の最高司祭とマチュピチュにいた春分の日。
今年は人種を超えて自然への祈りがひとつに繋がる春分の日。
またここから始まる。